デジタルイラストの塗り方の種類5選|うまく塗る方法や注意点もあわせて紹介
しまうま出版デザイナーより
しまうま出版のデザイナーが「イラストの塗り方にはどんな種類があるの?」といった疑問をお持ちの方に向けて、デジタルイラストの塗り方の種類を紹介します。うまく塗る方法や注意点についても解説しますので、これから挑戦される方はぜひお役立てください。
デジタルイラストなら、アニメ塗りやブラシ塗り、厚塗りなどさまざまな種類の塗り方があります。主な5つの種類を紹介しますね。
ありがとうございます。あと、上手に塗るにはどうしたらいいですか?
グラデーションをつけることやハイライトを活用することがポイントですよ。塗るときの注意点とあわせて、それぞれ解説していきますね。
デジタルイラストの塗り方の種類5選
デジタルイラストを描くときは、塗り方の種類を把握して使い分けることが大切です。様々な塗り方がありますが、今回は特に基本的な5つの種類について解説していきます。基本的な塗り方の種類を把握して、自身の作品に合った塗り方のベースを見つけましょう。
1:アニメ塗り
1つ目は「アニメ塗り」です。ベタ塗りをベースに影をつけていく、最も基本的な塗り方です。
アニメ制作に使われる「セル塗り」とよく似ているので、このような名前がついたと言われています。アニメ塗りは、はっきりした線で描かれたイラストに向いているので、特に初心者の方におすすめです。
具体的には、まずメインの塗りとなる色を選び、それをキャラクターやオブジェクトの表面に均一に塗ります。次に、影となる色を混ぜてキャラクターが光を受ける方向を考えて影をつけます。この影は一般的に一つの色相で塗られます。これだけで大丈夫かと不安になるかもしれませんが、意外にもこれだけでキャラクターやオブジェクトにそれなりに立体感を与えることができます。普段なにげなく見ているアニメもよく見るとそうした表現で十分に違和感のない塗りが実現されています。好きなアニメを見るときにもこうした目線で
2:ブラシ塗り
2つ目は「ブラシ塗り」です。アニメ塗りをベースにして、グラデーションやぼかしを加える塗り方です。
ブラシ塗りを使うと、イラストに含まれる色の種類が多くなるので、より多彩な表現が可能になります。イラストに高級感を出したいときや、アニメ塗りからワンステップ凝った塗り方を試したいときにおすすめです。
使用するブラシの種類やサイズによって、得られる効果や質感が変化します。硬めのブラシを使用することでエッジの立った部分を描き出し、柔らかいブラシを用いることで滑らかなグラデーションを生み出すことができます。ブラシで塗る際には、光と影のバランスを意識することで立体感を強調するように意識しましょう。また、色選びにおいては光の色や影の色を考慮しながら物体の質感を表現できるようになると、雰囲気のある作品も作れるようになります。
3:厚塗り
3つ目は「厚塗り」です。厚塗りは、油絵のように色を足していく塗り方です。
デジタルイラストに立体感や重厚感を出したいときには、特におすすめの手法です。厚塗りは、リアルな質感やボリューム感を出すための塗り方で、デジタルイラストに深みを与える方法の一つです。この手法は、一般的に油絵やアクリル絵画などに見られる塗り方で、デジタルで再現すると非常にリッチな表現が可能になります。色を重ねて塗ることで立体感や深みを出すことが特徴で、光と影の表現に優れており、リアルさを追求する場合に適しています。
そのため、一つ一つの色を丁寧に重ねて塗る時間と技術が必要となるので、ある程度絵を描くのに慣れている中上級者向けの塗り方と言えます。
塗り方の手順としては、まず下地となる色を全体的に塗り、その上から次々と色を重ねていきます。色を重ねる際には、明るい色から暗い色へと順に塗るのが一般的です。その後、細部の陰影を加えたり、ハイライトを入れて完成させます。
厚塗りのテクニックを使うと、リアルな質感や深みのあるイラストが描けますが、描き込みに時間がかかるため、締め切りがある仕事などでは注意が必要です。しかし、その労力に見合うだけの美しい仕上がりが得られることから、多くのイラストレーターに支持されている塗り方です。
4:水彩塗り
4つ目は「水彩塗り」です。水彩画のようにグラデーションを出す塗り方で、にじみを活かした表現や淡い色の表現をしたいときにおすすめです。また、繊細なイメージを出したいときや、優しい雰囲気のイラストを描きたいときにも向いています。
水彩塗りは、その名の通り水彩画のような透明感と柔らかさを表現する塗り方で、薄くて透明な色を何層にも重ねて深みと表現力を出すことが特徴で、デジタルイラストでリアルな質感を追求したいときに最適な方法といえます。
水彩塗りを行う際の一つの注意点として、色の濃淡をうまく使い分けることが挙げられます。透明感を出すためには、薄い色から始めて徐々に濃い色を重ねていくことが重要です。また、水彩塗りは色と色との境界をぼかす「ぼかし」の技法が特に重要です。デジタルで水彩塗りを再現するためには、ブラシの硬さや透明度、ブレンドモードなどを調整して、自然なぼかしが出来るように工夫することが求められます。
水彩塗りは他の塗り方と比べて難易度が高いとも言われています。色の調整やぼかしの技法など、覚えるべき要素が多いため、初心者には少々ハードルが高いかもしれません。ですが、一つ一つの技法を丁寧に学んでいくことで、独特の風合いと豊かな表現力を手に入れることができます。デジタルイラストでリアルな質感を出したい、水彩画特有の透明感と柔らかさを表現したいという人には、水彩塗りはおすすめの塗り方です。
5:ギャルゲ塗り
5つ目は「ギャルゲ塗り」です。アニメ塗りをベースに、消しゴムツールやエアブラシを活用して色の境目をなくす種類の塗り方です。ギャルゲーと呼ばれる恋愛シミュレーションゲームによく見られるような塗り方なので、このような名前がついています。
ギャルゲ塗りは、一般的に繊細な肌の色調と髪のテクスチャが他の塗り方とはかなり異なり、最大の特徴となります。とても繊細な色の設定とブラシの使い方によって描かれますので、ある程度デジタルイラストに慣れた方向けの塗り方になります。特に、肌は滑らかで透明感のある塗り方が求められ、淡い色味と柔らかなシャドウが特徴です。髪についても髪の束のテクスチャを強調し、光の反射を巧みに表現することで立体感を出しています。塗り方の名称の通り、人のキャラクターを塗る際に用いられることが多く、キャラクターは感情表現が豊かなので、表情や目の塗り方にも工夫が必要です。
デジタルイラストを上手に塗る方法を解説
デジタルイラストを上手に塗るには、グラデーションをつけることや、ハイライトを活用すること、レイヤーを分けることなどがポイントになります。それぞれのポイントについて、詳しく解説していきます。
なお、先に紹介したデジタルイラスト特有の塗り方のように、アナログのイラストとは異なる塗りの技術があり、これらを思い描いたイメージ通り上手に使うためには、いずれにしてもそれなりの練習が必要になるでしょう。また、アプリなどのソフトウェアによっても微妙に感覚が違ったりするため、これもコツを掴むのに少し時間がかかるかもしれません。最初のうちは思い通りにならなくても、諦めずに回数を重ねていくことで上手になるので頑張っていきましょう。
グラデーションをつける
上手に塗る方法の1つ目は、グラデーションをつけることです。グラデーションをつけると色の濃淡がなめらかになり、より自然な仕上がりになります。
グラデーションをうまくつけるためには、ブラシ塗りや水彩塗りを使うのがおすすめです。グラデーションをつけたい箇所を最初に塗りつぶし、徐々にぼかしていきながら、ハイライトを使って陰影をつけると自然な色合いに仕上がります。
ハイライトを活用する
上手に塗る方法の2つ目は、ハイライトを活用することです。ハイライトを入れると、より立体的かつ臨場感のあるイラストに仕上がります。
入れすぎると不自然に見えるので、最初は光が当たる1点を意識して、少しずつ入れるといいでしょう。イラストの中に太陽があることをイメージしながら、光が当たる部分に入れていくのがおすすめです。
レイヤーを分ける
上手に塗る方法の3つ目は、レイヤーを分けることです。ラフや下書き、本番とレイヤーを分ければ、修正作業をするときやあとから調整をするときに効率化できます。
ただし、あらかじめレイヤーの作成数を決めるのではなく、デジタルイラストを描くなかで要素が増えて自然にレイヤーが分かれるのが一般的です。レイヤーを分けることを意識するのではなく、「ラフ」「線画」など、自分の進めやすい方法で使い分けましょう。
デジタルイラストを塗るときの注意点
デジタルイラストを塗るときは、塗りもれがないようにすることや、光源を決めておくことが大切です。2つの注意点について見てみましょう。
ブラシの設定を怠らないようにする
デジタルイラストを作成する上で、ブラシの設定は非常に重要な要素となります。
ブラシには種類、硬さ、透明度、流量、形状、テクスチャ等のパラメータがあり、一つ一つは小さな差異ですが、積み重なることで最終的なイラスト全体の雰囲気や質感に大きく影響します。例えば、硬さのあるブラシは、色が強めに出て、鋭さなども表現しやすいです。はっきりとした塗り方として紹介したアニメ塗りとの相性が良いでしょう。反対に、柔らかいブラシを使用すれば、滑らかなグラデーションや複雑なテクスチャを作り出し、水彩塗りなどに適した仕上がりとなります。また、ブラシの透明度を調節することで、厚塗りからぼかし効果を活かした透明感のある塗りまで、多様な表現を選択することができます。さらに、ブラシの流量や形状を調整することで、線の太さや形状をコントロールし、統一感のあるスタイルを維持することが可能です。このような設定項目を把握して、少しずつ各パラメーターと結果との関係性を掴み、自身のスタイルや目指すイラストに合わせてブラシを設定することで、思い通りの仕上がりを実現することができます。
塗りもれがないようにする
デジタルイラストを作成するときは、塗りもれがないように気をつけましょう。
特に線の数が多くなると、細かい部分は塗りもれしやすくなります。塗りもれは作成している最中には気づかず、いざ印刷してしまってからおかしさに気づくということが多く、ショックも大きくなってしまいがちです。こうした事にならないためにも、普段から注意するクセを付けておくことが必要です。具体的に塗りもれを防ぐためには、蛍光色などのレイヤーを入れて、途中途中で塗りもれている部分がないかチェックしながら制作を進めることをオススメします。
光源位置を決めておく
デジタルイラストを作成するときは光源の位置を決めておくことも大切です。
光が当たる部分と影になる部分をはっきり描けるようになると、イラストにメリハリがつき、最終的な仕上がりが全く違って見えています。たとえば髪の毛の影や全身の影など、光と影ができやすい部分には注意が必要です。光の当たり具合によってイラストの雰囲気は大きく変わりますので、どの位置に光源を置くかあらかじめ決め、一度決めた後はそこからずらさないように注意して制作しましょう。
まとめ
今回はデジタルイラストの塗り方の種類について紹介しました。デジタルイラストを描く際は、出したい雰囲気やイメージに合わせた塗り方を選択することが重要です。塗り方の種類は多く、それぞれ奥深いですが、やればやるだけ着実にイラストのクオリティが上がるので楽しみながら上達を目指しましょう。
しまうま出版では、デジタルイラストの印刷・製本が1冊からできるサービスを提供しています。イラスト集やポートフォリオ、絵本などさまざまな印刷物に対応していますので、自分の作品を1冊にまとめたい場合などにぜひご活用ください。
いつもと違うジャンルのデジタルイラストを描こうと思っています。これまでイラストの塗り方の種類についてはあまり意識していなかったのですが、塗り方にはどんな種類がありますか?